サイバーセキュリティの教科書
原著のタイトルは「Making Sense of Cybersecurity」、つまり「サイバーセキュリティのセンスを作る」と訳せるでしょうか。筆者の言う「センス」とは以下の3つを指します。 適切さ バランス 持続可能性 セキュリティはとことん突き詰めようとすれば際限がなく、費用も青天井になりがちです。また、大企業と中小企業では、従業員数や保有する情報資産、取引先の数、そして何よりかけられる予算が全く異なります。 そのため、自社にとって適切な規模の対策をバランスよく行わなければ、セキュリティ対策自体を持続することができません。 特に「持続可能性」は重要です。セキュリティ対策は、テンプレートに従って一通りのドキュメントを作成し、ツールを導入したら「あとは放置」というわけにはいきません。対策は日々の活動の中で劣化し、その間にも新たな脅威が登場してきます。「セキュリティ担当、また同じことやっているのでは?」と周囲から疑惑の目を向けられつつも(?)、繰り返しの活動を継続しなければならないのです。 エンタメと実在のハッカーたち 本書の内容は基本的ですが、単なる知識の羅列ではなく、読者の興味を惹くような構成になっています。 例えば、映画『ウォー・ゲーム』(米軍のセキュリティの脆さを知らしめ、各種対策や法律制定に影響を与えた話題作)や『スニーカーズ』、書籍『ハッカーを追え』など、コンピュータ普及期にセキュリティ問題を突いたエンタメ作品が紹介されています。 情報を盗み、売りさばき、暴露するエピソードは、決してエンタメ世界だけの架空の話ではありません。本書では実在のハッカーについても触れられています。 世界で初めてワームを作成し有罪判決を受けたロバート・T・モリス。...
2025, Nov 30 —