kindle unlimitedで読むことのできるCISSP本を調べてみた

この記事を書いている1月上旬。2023年の朝活を何をしようか品定めをしているところです。ちょうどkindle unlimitedを(再)契約してセキュリティ関連の本を探していたところ、CISSP関連の本も多数読み放題であることが分かったので、昨年11月にCISSPを受験して不合格だった僕がw試験対策に使えるかをざっと調べてみることとしました。良い本があれば朝活に使うということで。 僕の昨年利用した学習コンテンツについては以前書いた記事にまとめていますのでそちらも見てください。 結論を知りたい方は記事最後までスライドしていただきたいです。 CISSP試験対策ノート1(その5まであります): 一問一答式で学習を最適化! CISSP チカラの2000題: 一問一答式で学習を最適化! CISSに出てくる単語をGoogle検索すると著者のWebサイトが引っかかります。問題をツイートしているtwitterアカウントもあります。どうもそれをまとめた書籍のようです。 出題される問題の形式には近いです。実際CISSPでは「○○(単語)とはなにか」のような暗記問題はほとんど出てこないです。「リスク分析を行っているチームは、リスクから生じ得る財務上の損失を予測している。潜在的な影響を評価するためチームは何をするか?」のような問題が出題されます。 ただ、日本語の品質はあまりよくありません。そしてたしかにこの2000題を完全丸暗記すればCISSP合格には近づくと思いますが、ただひたすらに問題が羅列されており、解説や回答が別ページに掲載されているわけでもないことから、正直学習用には使いにくい印象です。 Essential CISSP Test...

【ブックレビュー】サイバー戦争(下)

現代におけるセキュリティの攻防はGAFAのような超巨大企業vs国家及び国家の支援を受けた集団など、規模の大きいものとなっています。さらにはそこにエクスプロイトを見つけ出すハッカーと、彼らから情報を得るべく暗躍する国家のエージェントなど、それはまさに本のタイトルのように「戦争」です。そこには世界のギークなハッカーを動かすための大金と欲望が動くあまりにリアルな実情。 アメリカテック企業にとって自らのソフトウェアを悪用する敵は海外の非民主主義国家だけでなく、アメリカ政府だったりもします。「国防省をハックせよ」、という国防省からのハッカーへの「依頼」、アップルの徹底したプライバシーに対する姿勢、アメリカ合衆国の愛国者法など、これまで得てきた知識は現実社会で利活用されているということがこの本を読むとよく分かります。なので、セキュリティ担当者こそこの本は読むべきと思います。 アメリカを襲ったのはそのようなテクニカルな攻撃だけではありません。2016年のアメリカの選挙でトランプ大統領を当選させるためにロシアがインターネットで工作活動を行った、という話は日本でも知られています。しかしその具体的な手法は日本のニュースではあまり入ってきません。この本ではその具体的な活動にロシア側の誰が、どのような組織が、具体的にどんな手段で、アメリカの民衆心理と選挙システムを文字通り「ハッキング」していたかを詳細に書いています。この本はニューヨーク・タイムスに所属するサイバーセキュリティを専門とする記者が書いたもの。アメリカ市民はFacebookで自分を攻撃してきた人や、twitterで自分の怒りや不安を増幅させる投稿をしていた人が実はロシアの工作によるものだった、という事実の前にどう思うでしょうね(もっともこれらは今に始まったものではなく、旧ソ連時代からアメリカの世論を工作により操作していたようです。ベノナ・プロジェクト) そしてそれは日本においても起きているかもしれません。それを確かめるすべを僕たちは持っていません。 さらにはアメリカ国家安全保障局(NSA)が、表向きは脆弱性を公開して社会の危険なソフトウェアの脆弱性をつぶす活動を行っている一方、裏では本当に危険で悪用可能な脆弱性は秘匿し、その脆弱性を悪用したツールを作成し、海外に諜報活動を行っていたという事実。そしてそのツールが何者かによってインターネット上に公開されてしまい、かの悪名高いWannaCryに利用されます。アメリカが外国(同盟国すら含む)を脅かすために裏で作成したエクスプロイト(脆弱性を利用してコンピュータを攻撃するための具体的な手段)が自らにブーメランとして返ってきているのです。 マイクロソフトが国連で「サイバー版ジュネーヴ条約(戦時国際法としての傷病者及び捕虜の待遇改善のための国際条約)」について語るのも分かります。サイバー戦争で国家間がヒートアップして、国内のインフラがハッキングされ、停電・断水。データは暗号化され病院や銀国もストップ、さらには核施設など操作を一つ間違えたらとんでもない事態になってしまうシステムが外部からコントロールされてしまったらどうなってしまうのでしょうか?今年の夏静岡が大雨で停電、断水した時とても苦労しました。これが人為的に長期間行えてしまうのです。これは立派なテロです。 この本のエピローグにも書いてあるように、社会に張り巡らされたインターネットの先にあるコンピュータとそれにインストールされたソフトウェアのバグの問題をいきなりすべて解決する方法はありません。しかし社会全体がソフトウェアの利便性必要性を認識したうえで、バグを減らすこと、セキュリティを高めることに対する報酬を与えることが解決策の一つ、と筆者は説きます。セキュリティはどうしても「重要だが、優先度が低い」となりがちです。利益を生まないからです。しかし一度被害が発生したら莫大な損害を発生させます。 また、現代のソフトウェア開発は有志によるフリーソフト、オープンソースソフトウェアに支えられています。Dockerのようなコンテナ技術が普及し、Linuxがビジネスに多用されるようになったことはそれを加速させていますが、HeartBleedで脆弱性が明らかになったOpenSSLが、世界中の人が利用しているにもかかわらずぜんぜん支援がされていなかった、というのは大きな問題になりました。先日のLog4jの脆弱性も同じ問題が発生しています。無料で使わせてもらっているコードに対して、報酬が与えられていません。企業が上記の課題を解消するべく動き始めていますが、アメリカをはじめとした国際社会が協力してくれないと…まあ実際には難しいのでしょうけど。

【ブックレビュー】サイバー戦争(上)

昨年始まったロシア・ウクライナ戦争においては戦車やミサイルによる物理的な侵攻だけではなく、インフラに対するサイバー攻撃を交えた”ハイブリッド戦争”が行われている、というのは知られています。しかしこのようなセキュリティ脆弱性をついた攻撃は、僕たちが知らないだけで、昔より行われていました。そしてこのゼロデイとゼロデイを使ったエクスプロイトを巡ってはハッカー・企業・国家がそれぞれの思惑を基に蠢いていました。著者は長くサイバーセキュリティについて取材を行ってきたニューヨーク・タイムズの記者。 セキュリティは昔は重視されていませんでした。ソフトウェアのトレードオフスライダーで重視されるものはQualityよりもDeliveryであり、何よりリリースするスピードでした。しかしWindowsやInternet Explorerが世界中に普及してしまうと、そのバグでコンピュータを遠隔操作できたり、データを盗み見ることが可能になってしまうソフトウェアのバグは社会を揺るがす問題となりました。ビル・ゲイツも2002年、突然セキュリティの重要性をアナウンスして以来、マイクロソフトはアンチウィルスソフトを標準でバンドルしたりなど、セキュリティにもっとも真摯な企業の1つとなっています(その大きな理由は下巻で明らかになります)今でこそ買収したGitHubを始め、いくつかの会社がバグ報奨金という制度をおこなっていますが、昔はハッカーがバグを見つけ、ソフトウェア会社に報告することは「倫理に劣る」と言われた時代があり、アメリカ政府からもGoogleから見下されていたハッカーがキレて、「もうバグはただでは渡さないぞ」となりました。そうなるとそのゼロデイを買い取るのはアメリカの敵になりうるわけです。 先程「セキュリティの脆弱性をついた攻撃はずっと昔から行われていた」と書きましたが、冷戦時代のタイプライターの盗聴や暗号機への細工など、NSA(国家安全保障局)の工作活動の一旦が明かされます(大半は機密情報なので、筆者の分析や予想によります)しかし今はインターネットの時代、スパイ活動のやり方は根本的に変わりました。ジェームス・ボンドのようなエージェントから、政府お抱えのハッカー集団がエクスプロイトを作り、自国と他国の通信を傍受し、コンピュータに侵入します。 しかしながら、NSA(国家安全保障局)がゼロデイを自分たちのためだけに利用しようと秘匿しても、その数カ月後には他国の情報機関も同種の脆弱性を発見します。アメリカアズナンバーワンではなく、この分野では経済力に劣る独裁国家ですら五角以上の戦いが可能なのです。そしてアメリカは世界で最も情報化が進んだ国の一つであり、脆弱性を起因とするアタックサーフェイスが広いということです。自らが開発した攻撃ツールでブーメランのようにインフラを攻撃されるアメリカの現状は下巻に詳しく書かれています。 印象深かったのは「スタックスネット」。CISSP試験対策で知った単語で、”世界で初めて作られたマルウェア。アメリカとイスラエルが共同開発し、イランの核施設を攻撃した”と丸暗記しましたが、実際にそれを誰が作り、どのような挙動を起こし、それが最終的に世界に解き放されてしまう(アメリカを攻撃することを意味する)顛末が赤裸々に書かれていた章を読んで、セキュリティの専門家として知っておかなければならない不愉快な事実を知りました。 この本は上下巻構成となっています。上巻はセキュリティに関する国と国との生々しいやりとり、ゼロデイを見つけ出すハッカーや世界的に有名なセキュリティ企業など、セキュリティに関係ある仕事をしている人にとってはよく知られた固有名詞が出てきます。国際情勢の裏に蠢く見えない、気が付かない攻撃が世界中で行われていることを知ることができます。後半はもっとより技術的な話と、おそらくこの本が最も伝えたいこと・・・2016年のアメリカ大統領選挙のロシアの介入について書いています。こちらも読んでほしいです。 ただ、意外にもスノーデンのWikileaksの話はあまり出ませんでした。スノーデンは筆者にとっては深層を知っているものではない、という認識なのでしょうか。

情報処理安全確保支援士の実践講習を受講しました

※”情報処理安全確保支援士”は長いのでこの後は通称の”登録セキスペ”という単語を使います。 本記事の目的は、この度初めて受験した実践講習Bというものがどのような内容だったかということを紹介するとともに調べては忘れてしまう登録セキスペの更新ルールをまとめることです。 情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)とは この記事を読んでいる人の大半はご存知とは思いますが改めて説明しますと、もともと「情報セキュリティスペシャリスト試験」という名称で情報処理技術者試験に存在していた国家試験でした。2017年に国家資格に移行しました。僕もかつて試験に合格し、その後登録セキスペにスライドしました。 大きな違いとして、情報セキュリティスペシャリストは一度合格すれば資格を喪失することがないのに対して、登録セキスペは弁護士や公認会計士と同じく士業であり、免許の更新制を採用しています。ちなみに士業なので支援士番号が存在し、データベースから氏名や所属企業、得意分野などを検索可能です。 情報処理安全確保支援士検索サービス 登録セキスペの免許更新について 免許の更新には 1年に1回受講するオンライン講習 3年に1回受講する実践講習or特定講習 の2つが必要になります。 情報処理安全確保支援士 登録日・更新日別 講習受講および登録更新サイクル 早見表(2022年10月1日現在) 公式サイトに登録更新サイクルが載っていますが「3年に1回」というのは正確には「定められた3年間の中で1回受講する」という意味です。 実践講習はIPAが用意する汎用的な教育、特定講習は名前のとおり、特定の分野に特化した講習となり、IPAが委託した民間企業の講習となります。 詳細はIPAの公式Webサイトに掲載されています。...

LastPassからBitwardenに乗り換えました

今年もよろしくお願いします。 パスワード管理ツール「LastPass」の度重なるハッキング被害 パスワード管理ツールとしてLastPassは有名なツールです。しかしながら有名ゆえか攻撃対象となることも多いようです。 パスワード管理ツール「LastPass」がハッキングの被害、ソースコードと独自技術が漏洩 不幸中の幸いというべきか、顧客データや暗号化されたパスワード保管庫にアクセスされた形跡はないようだ。 8月時点ではパスワード保管庫にはアクセスされた形跡はないというアナウンスでしたが、その後8月に明らかになったハッキングとは別のハッキング被害もあり、結果パスワード保管庫にアクセスされたという結果が先日報告されました。 2022年8月の「LastPass」ハッキング被害、顧客データも盗まれていた ~当初想定より深刻 マスターパスワードを他のサイトのパスワードと使いまわしている人や、単純なパスワードの場合非常に危険です。パスワードの変更をしたほうが(もう遅いかもしれませんが・・・) 自分もLastPassを使っているのですが、こうもセキュリティインシデントの報告が相次ぐと使い続けるのは不安です。LastPassに代わるパスワード管理ツールを検討しました。仕事でも使っている1passwordも考えたのですが、今回はBitwardenを試してみることにしました。 Bitwardenとは 無料パスワード管理アプリ「Bitwarden」の使い方をIT管理プロが解説 上記の記事が詳しいのですが、僕がBitwardenを検討した理由の一つが、BitwardenはWindowsでもLinux(Chromebook)でも使える点です。自分はどちらのパソコンも使っているので。 LastPassからBitwardenへ移行 無料版が機能制限された人気パスワード管理サービス「LastPass」から「Bitwarden」に移行する方法...

Jykellの小技(RSSフィードを作成する・サイトマップを登録する)

今年最後の記事はセキュリティとは関係ないJekyllの小技です。 RSSフィードを設定する もう古い?!RSSで効率よく最新情報を取得する方法とは たしかに、今ではあまり使われなくなっていますが、僕は技術ブログやニュースサイトの情報収集にまだ使っています。 そんなRSSフィードを配置しました。 URLはこちら。 導入方法は簡単、というかデフォルト設定で既に登録されていました。URLを知らないだけだった…。 https://github.com/jekyll/jekyll-feed サイトマップを設定する サイトマップって何?SEO効果から作成方法まで徹底解説 動機としては、Google検索結果にGitHub Pagesを表示させる方法を調べていました。 GitHub PagesでGoogle検索に表示させたい jykellを使っている場合、「jekyll-sitemap」は元々組み込まれているため、わざわざ追記する必要はありません。...

Linux Foundationの「セキュアソフトウェア開発」を受講しました(3)

Linux Foundation「セキュア ソフトウェア開発」無料オンラインコースを開始 今年の勉強は今年のうちに。最終章の第3部の内容についての所感です。 自分用のメモが含まれているため、理解度テストの結果が含まれています。ネタバレを防ぐため、受講する人は先に受講してからこの記事を読んでほしいです。なお、Quizの「正しい記述を選んでください」「正しいものはどれですか」は複数回答があるので要注意です。 「第3部:検証とより専門的なトピック」 テストの手法やテストで活用できるツールやSTRIDEのようなルール、暗号化のアルゴリズム(鍵についての説明は詳しいです)、脆弱性を検出した場合の対応などが説明されています。 このオンラインコースを受けていて感心するのが、最新の事情に合わせて書かれていることです。文中に出てくるブラウザも、Webサービスも2022年現在に使用されているものが挙げられます。当たり前と思う人もいるかもしれませんが、この手のドキュメントは更新されず、時代遅れになることはままあります。そしてセキュリティの世界において陳腐化したドキュメントの効果はいま一つです(だからこそ登録セキスぺは毎年更新が必要なのでしょう) 最後にアンケートがあったので以下のように回答しました。 内容は詳細で、情報は新しく、説明は丁寧だった テキストに書かれていない問題がいくつかあった ナレッジチェックの翻訳を改善してほしい セキュリティの最新の標準と技術を説明している天が良い 最終問題は40問、80%以上正解しないと合格証書はもらえません。 なかなかの難易度でしたが、一発で合格しました。プライドは保たれましたね・・・w...

Linux Foundationの「セキュアソフトウェア開発」を受講しました(2)

Linux Foundation「セキュア ソフトウェア開発」無料オンラインコースを開始 第2部の内容についての所感です。 自分用のメモが含まれているため、理解度テストの結果が含まれています。ネタバレを防ぐため、受講する人は先に受講してからこの記事を読んでほしいです。 「第2部:実装」 バリデーションがメインの内容です。 バリデーションと一言に行っても、単に数値やテキストを超え、テキストエンコーディングやデシアライゼーション、外部参照、環境変数の利用など考えることが多いです。csvファイル自体に書かれているのは単純な文字列でも、Excelで開いた場合に「=」が使われていると関数とみなして実行するなど、言われてみると「そういえばそうだ」という話も多く掲載されています。 また、バリデーションや値チェックなど不正な入力値をチェックできても、人間が意図せず作りこんだプログラムのバグまではチェックできません。 CVE-2014-1266、通称「goto fail; goto fail;」脆弱性(https://appllio.com/20140223-4899-apple-ios-bug-ssl-goto-fail)など、ぞっとする話ですが同時にやりかねない話だと思います。 知らないことが多かったです。 歴史的には、すべての文字を識別するには16ビットで十分だと考えられていましたが、これは間違いで、1996年に変更されました(現在はどの文字も21ビットで符号化するようになっています)。この間違いの結果、一部のプログラミング言語は、16ビット長しかない「文字」型(Javaのcharなど)を持っています。16ビットのデータ型は、それ自体では21ビットの任意の文字を格納できないため、16ビットの「文字」を持つプログラミング言語やAPIでは、「文字」が実際の文字の半分しかないことがあります。...