【ブックレビュー】ピアリング戦記
電子書籍を買うと物理本も一緒に郵送してくれるユニークなサービスで知られるラムダノートが12/19まで電子書籍限定で半額セールをやっているので、前から気になっていた「ピアリング戦記」を買いました。
例えば僕がYahoo.co.jpにアクセスしようとすると、僕がインターネット回線を契約しているGMOインターネットのネットワークにまず繋げます。GMOインターネットがNTTと繋がり、NTTがYahooと繋がり、ヤフーのホームページが稼働しているサーバに繋がるのです(もちろん概念を説明するための例えであり、実際には別のネットワークを経由しているのかもしれません)
インターネットはいくつかの企業・組織が運営しているネットワークが蜘蛛の巣(ウェブ)のように繋がったものです。そのネットワークを提供する会社であるISP(インターネットサービスプロバイダー)同士が繋がり合う技術を「ピアリング」と言います。 ピアリングはトランジット(力が弱いISPが対価を払って力の強いISPにパケットを転送してもらう)と同様の技術が使われていますが、互いにトラフィックを交換し合う、トラフィックに対しての対価の支払いが発生しない契約です(実際には対価を要求することがある(ペイドピア)、あるいはバーターの契約があったりするようですが)
僕は前職はISPで働いていました私見ですが、ISPはあまり儲けのない仕事です、その代わりインフラという生活必需品(コロナ禍になり、リモートワークの時代になり、ワールドカップがABEMAで見る時代ですから今この瞬間がまさに有史以来もっともネットワークが必要とされているでしょう。)業績は安定しています。わざわざ今からISPをやりたいという会社もなかなかないという現実wそして会社が違うからこそ利用している電力会社や配線敷設ルートも異なり、これが結果として冗長性を確保しています。皆が同じルートと同じ電力会社を使っていたら、地震や火災で全滅ですからね。社会インフラを構成する都合、持ちつ持たれつ、ウィン・ウィンの関係を築きつつも、競争意識も働いています。
そんなピアリング業界ですが、You Tubeを持つGoogleやABEMA、ウマ娘などスマフォゲームを有するサイバーエージェントなど、、今やコンテンツ事業者が力を持つ状況で、コンテンツ事業者、配信事業者同士が自前の回線同士を繋げ、ISPに繋がない事例も出てきてます。
インタビューから様々な裏話が聞けます。 東日本大震災で海底ケーブルが切れて、危うく東京ネット壊滅だったとか。あのとき電話はまったく繋がりませんでしたが、ネットは全く問題なかったのですが、裏ではあわや、だったのですね。南海トラフ地震にも備え、各ISPは冗長構成で回線を引いていてくれてありがたいです。 日本で初めてインターネットが利用され始めた頃のエピソードやInternetEXchangeを立ち上げる活動。まさかあんな場所で、あんな機器を使ってISPを相互接続していたなんて、今では考えられない話です。今でこそL2はEthernetですが、まだどのプロトコルが事実上の標準になるかわからない時代、たいへんだったいっぽう創成期ならではの「みんなでやってみよう」みたいな空気もインタビューで聞けて、過去そういうことをやっていたんだよ、という、あとがきにもあるように、当時のその人しか知らないような、人知れず起きた出来事もいくつかあり、それが書かれることは資料的価値も高いです。
ちなみにこの本の著者はかつてアカマイ 知られざるインターネットの巨人を書かれた人でもあるのですね。当時は知られざる大企業だったアカマイも、今回のサッカーW杯でABEMAが1000万超えの接続をさばくインフラで活用したということでニュースでも名前が上がり、皆が知る会社となりましたね。